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生成AI時代に問われる「本質的な思考力」
Posted 2025年10月23日 by
日々、診察や経営でお忙しい院長先生方も、おそらく「ChatGPT」をはじめとする生成AIという言葉を耳にされているかと思います。
私は日頃から生成AIを活用しており、今や手放せない「右腕」のような存在です。例えば、経営の課題に行き詰まった際、これまでの考えを整理して生成AIに問うと、ネット上の膨大な情報を整理し、質の高い示唆を与えてくれます。特に最近の推論モデルは、専門性の高い質問に対しても、詳細な調査に基づいた回答を返してくれるため、頼れる「相談相手」となっています。
しかし、この便利なAIと私たちの「知性」の関係について、先日、あるコラムを読み、大変考えさせられました。
日本経済新聞に2025年3月24日に掲載されたFinancial Timesのコラム「人間の知性は衰退を始めたか」です。この記事では、OECD(経済協力開発機構)による「学習到達度調査(PISA)」の最新結果が紹介されています。これは、15歳の生徒が読解力、数学、科学の3分野をどの程度活用できているかを測る調査です。
衝撃的なことに、世界全体で見ると、2012年頃からスコアは頭打ちになり、その後は大きく落ち込んでいるというのです。また、この思考力や問題解決能力の低下傾向は、10代だけでなく、成人にも同様に見られるとのこと。
これは、情報がオンラインで常に手に入るようになった時期と重なります。記事では、「活字離れは視覚メディアへの移行が進んだ結果ではないか」と考察しています。
私たちは、思考を検索エンジンやSNS、そして生成AIに「アウトソーシング」し過ぎていないでしょうか?
かつては、何かを学ぶ際、本を調べたり、自分の頭で深く考えるプロセスがありました。この能動的な探求を通じて、思わぬ情報と結びつき、新たな発見やアイデアの飛躍が生まれる「セレンディピティ(偶発的な幸運)」が起こっていました。
しかし、今は断片的な情報が次々と流れてくるSNSを受動的・感覚的に消費する傾向が強まっています。この「思考のアウトソーシング」の結果が、OECD調査が示す「知性の衰退」だとしたら、生成AIの進化は、この傾向をさらに加速させるでしょう。
院長先生に問われる「生成AIとの接し方」
この流れの中で、私たちに問われているのは、「生成AIとの接し方」です。これは、日々の診察、診断、そして動物病院の経営にも共通する重要なテーマです。
生成AIは、最新の治療法や疾患の情報を整理したり、経営指標の分析を手伝ったりする強力なツールになり得ます。しかし、最終的な診断を下し、治療方針を決定し、病院という組織を導くのは、院長先生ご自身です。
理想的な関係は、「熟練の外科医と、その有能な助手」の関係に似ています。
■ 有能な助手(生成AI)は、手術中に必要な器具を最適なタイミングで手渡し、バイタルデータや既往歴といった大量の情報を瞬時に確認し、術者の負担を軽減します。彼らは、次のステップを予測し、的確な準備を整えます。
■ しかし、メスを握り、状況に応じて判断を下し、手術の成否の責任を負うのは、あくまで外科医である院長先生ご自身です。
外科医は、多くの情報収集や準備作業を助手に任せていますが、「命を救う」という本質的な自分の仕事はアウトソーシングせず、自らの技術と判断力で完遂します。
私たちは、生成AIを思考を深めるための「最高の対話相手」として活用すべきです。
■ 自分の頭でまず深く考える。(診断仮説を立てる)
■ 考えを明確な文章にして生成AIに質問する。(稀な症例や最新論文の情報を検索・整理させる)
■ 返ってきた回答を鵜呑みにせず、それを叩き台にしてさらに深く考える。(症例への適応を判断する)
便利さに頼りすぎるあまり、ご自身の「本質的な思考力」、つまり「獣医療の核となる判断力」や「経営者としての決断力」をAIに委ねてしまわないよう、自らを律することが求められる時代に入っています。
生成AIを「強力な熟練の助手」として駆使し、院長先生の専門性と判断力をさらに磨いていくこと。これが、これからの動物病院経営の成功の鍵となるでしょう。
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